遺産分割協議のやり直し
相続の開始後に一度遺産分割協議が成立した後も、相続人全員で合意の上であれば、もう一度遺産分割協議をやり直すことは可能です。
ただし、税務上の問題は別です。
法律上は可能でも、税務上の取扱いはかなり厳しいものとなっています。
当初作成した遺産分割協議書が強迫や詐欺などによるものでない限り、再分割協議は課税される場合があります。
共同相続人に分属した財産を分割のやり直しとして再分割した場合は、課税については税理士さん等に相談されたほうがよいでしょう。
仮に相続人全ての合意があったとしてもそれは遺産分割としてではなく、分割協議後の財産移動とみなされ贈与税の対象となってしまう場合があるからです。
相続税の通達では、「当初の分割により共同相続人に分属した財産を分割のやり直しとして再分割した場合には、その再分割により取得した相続財産は遺産分割により取得したものとはならない」としています。
つまり、遺産分割のやり直しは、税務上では「贈与」や「譲渡」として課税されるということになります。
もちろん、登録免許税や不動産取得税もそれぞれ場合に応じて課税されます。
遺産分割のやり直しは、それ自体は可能ですが、行うには金銭的なデメリットの方が高いです。
したがって、遺産の再分割協議はそれだけ慎重にする必要があります。
なお、相続人の1人を関与させずにされた遺産分割等はもともとが無効な遺産分割ですので遺産分割協議をやり直す必要があります。
このように法律上と税務上は異なる可能性がありますので、注意が必要です。
遺産分割のやり直しの判例
合意解除(可能)
「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではない。」との趣旨の最高裁判決もあります。
法定解除(不可能)
「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条によって右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。
遺産分割は相続人の全員によって合意されたので、全員の合意で解除することは自由だが、一部の者の債務不履行(例えば納税や扶養義務違反)を理由にして解除してしまうことは合理的ではない。」
相続登記に関してはすでに相続登記がなされている場合には通常、相続登記を抹消して、新たに相続登記を申請することになります。
遺産分割協議後に相続人となった方がいる場合
この場合は、すでに遺産分割がなされた場合には価格による支払いですませることも可能です。
なお、すでに認知等を受けた相続人を除いて登記をした場合、遺産分割協議自体が無効となります。
この場合は遺産分割協議前からの相続人で、遺産分割協議後の相続人にはあたらないからです。