(特例)有限会社から株式会社への移行
商号変更による設立
会社法の施行(平成18年)により資本金の額が1円以上で株式会社の会社設立ができるようになり、閉鎖会社(株式の譲渡制限のある株式会社)においては取締役会や監査役を置かない従来の有限会社型の機関設定も可能となりました。
そのため、従来の有限会社型である株式会社が設立可能となり、有限会社を設立することの意義が薄れてきました。
また、株式会社では資本金の制限や取締役会の有無等、機関設計が自由にできるようになりました。
従来の有限会社は資本金の増加や取締役を増員することや、監査役を設置することなく、有限会社から株式会社に比較的簡易に移行することが可能になりました。
移行するには特例有限会社から株式会社に移行する登記が必須となります。
実質的には有限会社を解散し、新たに「株式会社を設立」する訳ですから、株式会社にする際に、新しく機関設計や株式や資本額等の会社の組織を見直すことも可能となります。
つまり、単に商号を有限会社から株式会社に変更するだけではなく、目的や役員の変更、資本等を増加させて新たに株式会社として出発することも可能となりました。
株式会社に移行するメリットとデメリット
株式会社に移行するメリット
- 株式会社の方が対外的信用性が大きい
- 企業拡大という観点からは株式会社のほうが有利
株式会社に移行するデメリット
- 毎年の決算公告義務が課される
- 役員の変更登記の必要性が出てくる
有限会社から株式会社への移行の方法
有限会社から株式会社へ移行するには、以下の項目を満たさなければなりません。
- 社員総会(株主総会)で、「有限会社」を「株式会社」に変更する
- 定款の変更(場合によりその他必要な定款の変更)
- 総株主の半数以上で、当該株主の議決権の4分の3以上の特別決議が必要
その他に、移行後の株式会社の株式の譲渡制限の定めの設定の有無、取締役会設置の有無、役員について等が必要となります。
株式会社への移行に必要な登記
有限会社が株式会社に移行するには、有限会社から株式会社への「商号変更による設立登記」と、従来の有限会社はなくなるわけですから「商号変更による解散登記」
という2つの登記を同時に申請します。
登記をしなければ、特例有限会社を株式会社にすることはできません。
従来の有限会社は特例有限会社として残りますので、強制的に株式会社にしなければいけないということはありません。
株式会社への移行と同時に本店移転は不可
株式会社への移行の登記とあわせて本店移転の登記をすることはできません。
まずは本店移転し、それから新所在地において商号変更による設立登記・解散の登記の申請をすることとなります。
株式会社への移行の際、定款認証は不要
設立の登記とはいえ新設のものではなく、実質的に組織変更といえるので定款認証は不要です。
ですので、公証人による定款認証手数料も不要です。
一から株式会社を設立していくよりも費用は安くなるという特徴があります。
司法書士への依頼に必要な書類
- 定款
- 公証人の認証は不要。
司法書士が原案を作成することも可能です。 - 株主総会議事録
- 司法書士が原案を作成することも可能です。
- 会社を代表する取締役から司法書士への委任状
- 記名、押印が必要。
司法書士が作成します。
有限会社から株式会社への移行に必要な登録免許税
商号変更による設立登記の登録免許税は、増加した資本の金額の7パーセント、もしくはその金額が3万円を下回る場合は3万円です。
商号変更による解散登記の登録免許税は、3万円です。
資本の増加がない場合は、登録免許税は設立、解散合計で金6万円となります。
商号変更による設立登記や商号変更による解散登記と同時に、目的の変更や役員変更等を同時におこなった場合でも別途登録税はかかりません(本店移転した場合は別)。
ですので、一度にすることをお勧めします。